
この記事のポイント
- 発注前の準備が足りないと、見積もりを比べられない、途中で費用が膨らむ、完成しても使われない、といったことが起きやすくなります。
- 社内で決めておきたいのは、目的・今の業務の流れ・機能の優先順位・予算と期間・社内の体制の5つです。
- 決めたことは1〜2枚の資料(提案依頼書)にまとめ、同じ資料を複数の会社に渡して比べます。
- 見積もりは金額だけでなく、内訳・前提条件・完成後の費用・契約内容まで確認します。
準備が足りないまま外注すると起きやすいこと
「どの会社に頼めばいいか分からない」「見積もりの金額が、会社によって大きく違う」。システム開発を初めて外注するときに、多くの方がこうした迷いを抱えます。原因の多くは、開発会社に相談する前の準備にあります。
- 会社ごとに見積もりの前提が違い、金額を比べられない
- 開発の途中で「この機能も必要だった」と追加が続き、費用と期間が膨らむ
- 完成したシステムが現場の業務に合わず、使われない
こうしたことを防ぐために、発注前に社内で決めておきたいことが5つあります。
社内で決めておきたい5つのこと

1. 目的:何を、どれだけ良くしたいのか
「システムを入れること」は目的ではありません。「受注の入力に毎日2時間かかっている作業を、30分にしたい」のように、今の困りごとと目指す状態を、できるだけ数字で書き出します。目的がはっきりしていると、開発会社も必要な機能を提案しやすくなります。(文中の数字は例です)
2. 今の業務の流れ:誰が、いつ、何をしているか
対象の業務について、担当者、使っている書類やExcel、確認や承認のタイミングを順番に書き出します。「月末だけ発生する作業」「担当者によってやり方が違う作業」などの例外も忘れずに。ここが曖昧なままだと、完成後に「現場の実態と違う」というずれが生まれます。
3. 機能の優先順位:必ず必要なもの、あとでよいもの
欲しい機能を「必ず必要」「あると良い」「なくてもよい」の3つに分けます。最初は「必ず必要」なものに絞って小さく始め、使いながら広げていくほうが、費用も失敗のリスクも抑えられます。
4. 予算と期間の上限
開発費だけでなく、サーバーの利用料や保守費用など、完成後に毎月・毎年かかる費用も含めて考えます。上限をあらかじめ伝えておくと、開発会社もその範囲で実現できる方法を提案しやすくなります。
5. 社内の体制:窓口と、最終的に決める人
開発会社とやりとりする窓口、現場で動作を確かめる人、最終的に判断する人を決めます。開発中は、画面や機能の確認を求められる場面が何度もあります。窓口の担当者が他の業務と兼任する場合は、週にどのくらいの時間を使えるかも確認しておきましょう。
ポイント:決めたことは「提案依頼書」にまとめる
5つのことを1〜2枚の資料にまとめたものを、提案依頼書(RFP)と呼びます。会社と事業の概要、目的と現状の課題、今の業務の流れ、必要な機能と優先順位、予算と希望時期、社内の体制、提案してほしい内容(見積もりの内訳・スケジュール・保守の内容)を載せます。同じ資料を複数の会社に渡すことで、提案を同じ条件で比べられます。
見積もりを比べるときの5つのポイント

- 内訳があるか:「一式」ではなく、機能ごと・作業の工程ごとに金額が分かれているか
- 前提条件と、含まれないもの:データの移行、操作の説明、テストの範囲などが見積もりに含まれているか
- 完成後の費用:保守・サーバーの費用や、機能を追加するときの単価
- 体制と進め方:誰が担当し、どのくらいの頻度で進み具合を共有してくれるか
- 契約の内容:完成したプログラムの権利(著作権)や、ソースコードを受け取れるかどうか
金額の安さだけで決めず、目的を達成できる提案になっているかで比べることが大切です。
社内だけで整理するのが難しいときは

目的や業務の流れを整理し、開発会社に伝わる形にまとめるには、業務とITの両方の知識が必要です。社内にIT担当者がいない場合は、発注する側の立場で要件の整理や進行管理を担う「ディレクション」を、外部の専門家に頼む方法もあります。
よくある質問
- 要件が固まっていなくても、開発会社に相談してよいですか?
- はい、相談はできます。ただし、目的と今の業務の流れだけでも整理しておくと、相談の内容が具体的になり、受け取れる提案の質も上がります。
- 見積もりの金額が、会社によって大きく違うのはなぜですか?
- 会社ごとに、前提としている機能の範囲、作り方、体制、テストの範囲などが違うためです。同じ提案依頼書を渡し、内訳を並べて比べると、違いの理由が見えてきます。
- 既製品のサービスと、オリジナルの開発はどちらがよいですか?
- 業務の多くが一般的な流れであれば、既製品のクラウドサービスを使うほうが、費用も期間も抑えやすくなります。自社独自のやり方が強みになっている業務は、オリジナルの開発が向いている場合があります。両方を比べてから判断しましょう。
- 完成したあとには、どんな費用がかかりますか?
- サーバーやクラウドの利用料、不具合への対応やセキュリティ更新などの保守費用、機能の追加・改修の費用などがかかります。開発費とあわせて、年単位で見積もっておくと安心です。
まとめ
- 発注前に、目的・業務の流れ・機能の優先順位・予算と期間・社内の体制の5つを決める
- 決めたことは提案依頼書にまとめ、同じ条件で複数の会社を比べる
- 見積もりは、内訳・前提条件・完成後の費用・契約内容まで確認する

